やじさん異世界奮闘記
- 2018.09.07
- やじさん異世界奮闘記

ダンジョンでレベル上げ 3
5メートル程の階段を降りると次の間への入り口があった。
やじさんは団長さんから鍵を貰って両開きのドアの片方を静かに開けて中を覗き込んだ。
「ねえ、アルさん、ここって宝物庫っていうか物置でいいんだよね?」
「あぁ 通路は一つしかないし、間違いはないぞ」
「森なんですけど・・・ でも棚はあるな」
「どれどれ」
夕杏が続けて覗きこむ。
「これってトレントじゃない? 床はちゃんとあるし、天井に枝が広がっている感じかな~」
「そうか、ならデカいのか、数が多いかどっちかだな」
「火系の魔法は使えないね」
「どれ、でっかいキンタローアクスで薪にでもしてやるか」
「ちょっと待ってね、サーチしてみるわ、 うんとね、奥の方に一体だけかな」
「となると、この枝ぶりからいって、大きそうだな? こんなに育って動けるのか?」
「そうね、いろいろ引っかかって、移動はそんなに出来ないんじゃないかな」
「思い出した。トレントって、なんかブツけて来なかったっけ? 木の実みたいな固いやつを出し惜しみなく」
「そうだった。 私、あざが出来るの嫌だから傍に行かない アルさんファイト!」
「うむ、もう少しとなったら呼んでくれ、レベルが上がったので鉄の矢でもいけそうだぞ」
「みんな好きなこと言っちゃって、寸止めの難しさを分かってるのかねー」
「じゃあ、オートプロテクションかけるよ」
プロテクションの上位魔法であるオートは、衝撃のある個所を重点に厚くなって、その力を吸収する優れものだ。
「ついでに氷魔法ぶち込んで、動きを鈍らせてくれよ」
「じゃあ、やじさんにヘイト乗ってからかけるね」
「ほい、じゃあ、やじ行きまーす」
やじさんが部屋に侵入するとともに、ざわざわと小枝が動き出し、部屋の中が騒がしくなった。
「スタンアイシクル」
夕杏は氷でできた矢を10本ほど時間差で打ち出す。
矢が当たった効果は、枝から本体迄、少しの間動きを止める事が出来る。時間差で打ち出される事によって、モンスターは10秒程の間、ほとんど動けなくなってしまうのだった。
「良しと、まずは枝を払ってしまうかね」
やじさんは、本体へ近づいてすぐ、斧で幹から伸びる枝を全て薙ぎ払った。これで木の実を飛ばす事は出来なくなり、モンスターに残された武器は、6本の根と人をまるかじりできるほどの大きな口だけとなった。
「夕杏、枝は取り除いたから、アルさん連れてこっちに来て」
「了解、アルさん行きましょう」
「わかった、団長行くぞ」
いつの間にか騎士団長から、ただの団長と呼ばれるようになってしまった騎士団長は覇気がなくなってきた。
「・・・・・・はい」
「夕杏、これから根っこを取り除くから、アルさんに矢を打ち込むように言ってくれや」
「わかったわ、アルさんやじさんがヘイト稼ぐから好きなだけ撃っていいわよ」
「おっ射撃スキルもあがるなw」
「ほら、手を動かして」
「ラジャー」
スタンアイシクルは耐性が付いている頃なので、夕杏はヘビーウエイトを唱えた。これによって動きが遅くなる為こちらに近づいて来ても楽に対応できる。
やじさんが根を4本落としたところでモンスターはバランスを保てずに倒れ込む。
アルさんはすっかり脳筋モードで既に20本ほど矢を当てているので、そろそろ終わりに近づくはずだ。
「やじさん、とどめを」
「了解」
やじさんは、斧を大きく振りかぶって、残っていた2本の根に狙いを定め動く。
「パワード・アクス!」
ウエポンスキルではない、只の斧の重さと力のごり押しだけの技に、勝手にネーミングしてみただけである。
夕杏も同時に雷系の衝撃魔法を放った。
「ライティングボール!」
活動の源である根を絶たれ、大きな口の中に衝撃をぶち込まれたトレントは、何もできないまま消えていく。
「ふぅ、終わったぜい、 なあ夕杏、こいつのレベル分かったか?」
「ステータスの差が大きすぎて分からないのは、やじさんと一緒だよ」
「そうだよな、さっきもそうだったけど、なんか普通のトレントじゃないんだよなぁ。 アルさんのレベルの上がり方を見ると、ちょっと早すぎるような気もするしさ」
「そうだ、アルさん今でいくつ上がった?」
アルさんは見て欲しかったのだが、自分で見て何も無かったように答えた。
「18になってるぞ、すごいな」
「ほらな、アルさんのレベルなら、普通のトレントで1つ上がる位だぜ、それが5つ上がるって事は、やっぱり普通じゃないんだよ」
「なるほど…、これは技術が追いつかなくなりそうだね」
「そうじゃなくて・・・・・ わざと言ってる?」
「多分だけど、モンスターも独自に成長してるんじゃないかな? 進化って言った方がいいかもだけど」
「ここ未だ地下2階だぜ、次ってやっぱり今より強くなるしさ、一旦戻ってアルさんの装備と武器考えようぜ」
「うん、念には念をだね、いいアルさん?」
「二人の意見に従うぞ」
「よし、じゃあ戻って作戦会議だ。 団長さんここの換気と穴埋めだけはしておいてください。それと地下3階の扉は決して開けないように伝えてください」
こいつのせいだと分かっていても、王のレベルが上がる事を考えればと、この位の事…騎士団長は大きな器の男であった。
「あいわかった」
「少し早いが昼食の用意をさせよう、何がいいかな?」
「そうね、会議しながらだから、サンドイッチと紅茶でお願いできるかな?」
「なるほど、そのようにしよう」
やじさん達は応接室に陣取り暫くの間、アルさんのレベルの上がり方から相手のレベルを計る事に集中した。
「なるほどな、1階で約2倍、2階で約3倍って事は、次は???」
「行ってみなけりゃ分からないでしょ、まだデータが少なすぎ」
「だよな、でも少なくても4~6倍の可能性はあるな」
「そうね、Lvでいったら3階は4~50位かな?でも中レベルからは上がりにくいから、そこまではいかないかな?」
「アルさんには重装備させたいけどLv制限あるからなぁ」
「私たちだけで、入ってみて考えようか?」
「んだな、あっ昼飯きた~、 とりあえず飯タイムでw」
会議をしながらという事でサンドイッチにしてもらった事を、やじさんは忘れている。
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