やじさん若くなる? 2



 やじさんの試した騎士の防具は無事に装着できて一応ほっとはしたのだが、ジョブ設定を替えられないとなると、ジョブ限定のある装備が多く、やじさん達が装着できない物がたくさん出てくる事になる。

 騎士の防具は主に自分たちよりはるかに強い敵との長い戦闘時間を想定し、希少な素材で作られている防御力が非常に高い防具だ。 ただ造りが防御力重視のため、全体が隙間なく頑丈にできているため、プレイヤーの動きが少しではあるが緩慢になってしまうし、騎士のジョブ補正がかかって防御力は上がるが攻撃力が下がってしまうのである。

 多少の強いやつ相手ならば防御力は多少落ちるが、瞬発力があって素早く動ける剣士や魔法剣士の防具の方が正確に急所を狙う事ができるし、回避性も高くなるからダメージを受けにくくなって、結果的に早く処理できるので疲れが少なくて済む。

 それに魔法攻撃しか通じないモンスターもいる。その場合は魔導士防具を装着して魔法力を補正しなければダメージが通りにくく戦闘自体が長びく事になり、下手をすると魔力が枯渇し負けてしまう事も考えられるのだ。

 なので、やじさん達は少しばかり手間がかかるとは思ったが、これからの事を考えると確かめずにはいられなくなり一通り武器や装備を試着してみる事にした。

 そして その結果は全ての物がなんの手だても必要とせずに装着できてしまった。これは今までの不安を一蹴し、その都度考えて選択し装備を決めてから戦闘をしていた、これまでの着替えセオリーが覆った時でもあった。

 なにせジョブの縛りがないという事は、これまで防御性能が低い装備しか選べなかった魔導士が分厚くて安全な騎士の防具を装備できるという事だ。

 また、これだけではなくもう一つの素敵な出来事が分かった。
 実は装備のジョブ縛りはそのまま残っており以前と変わりはなく、変わったのは自分たちだったのだ。

 やじさんたちは基本の5つのジョブをはじめセカンドジョブまでも併せ持った存在となっていたのだ。それでジョブの選択という事自体が必要でなくなり、メインパネルでの操作が出来なくなっていたという事だった。

「なあ 夕杏… これって魔法も物理系も全ジョブの最高値になってんじゃね? 俺たち?」

「なんか やじさん なんか楽しそうだね  めまぐるしくて飽きない人だよね~」

「仕方ないだろ ここへ来たことをウジウジ考えても何も変わらないんだし、良い事は素直に喜ばなきゃねw」

「そうだ これ渡しとくね  復活キャンペーンの指輪とイヤリング 」

夕杏は思いついた。このタイミングで渡しておけばこの装備の制限解除をうやむやに出来るだろうと、いや今しかないと。

「俺も復活キャンペーン対象になるのかな? まあ下さるというものはありがたく頂戴しておきますか」

「それ 防御と戦闘力がそれぞれ上がる奴だからね、今の状態で付けたら ほぼ無敵状態だね」

「あ~ じゃあ夕杏が付けといてよ  必要な時は言うからさ」

「え~ だってこれ戻ってきた人の特典だよ」

「本人が付けなきゃいけないって決まりじゃないんだろ?  ならいいじゃん」

「だって 預かって 帰ってきたら渡せって言われてたし」


「よし わかった じゃあ半分半分という事で イヤリング貰うわ  必要な時は交換するで いいだろ?」

「わかったわよ どうせその方が安心だとか言うんでしょ」

「正解! よしそれじゃ 久々にギルドのおっちゃんに会いに行ってみるかね」


 やじさんは最低限である今、現在の自分たちの力量を確認する事が出来たので、暫く住む事になる街の様子が知りたくなったのだ。
 ギルドのおっちゃん(ガン・クイックショット 通称 ガンちゃん)には初心者の頃から色々と情報を流してもらっていた。
 AIだからなのか「お前だけ 特別だぞ」と他の冒険者達への対応とは違う所が好きであった。

「覚えてるかな? 少しばかり若くなったからな」

「やじです って言えばいいじゃん」

「それじゃ 感動ってものが無いでしょう 夕杏くん  物語はこれから始まるんだぜ」

「はい はい」


 商店街を歩いている最中に食堂から漂ってくる美味しそうな匂いが腹の虫を泣かせそうだが、帰りにしようと我慢して5分程進むと、街の正門横にあるギルドに着いた。

「懐かしいね 数か月だったけど」

 木造でシンプルな作りだが銀行と商品取引所を兼ねているのでコンビニ4店舗分くらいの大きさはある。それをガンちゃんとアキちゃんの二人でこなしていたのだから凄い。

『アキちゃんも 元気かな』と思いつつドアを開け中へ入ると

「やあ やじさん久し振りだね お子ちゃまに変身したみたいだけど」

「どうして わかる??」

「これでもこの街のギルドの責任者だぜ、 定時のフィールドサーチは欠かせませんよ」

「ムム その手が あったか」と うつむくやじさん

「1号さんも久しぶりだね」

「ガンちゃん チョイまち その名前は勘弁してくれ さあ自己紹介を」と顔をあげたやじさん

「お久しぶりです ガンさん 今日から夕杏と名乗る事になりました。」

  「ふーん そうなんだ  よかったね 夕杏ちゃん」

「はい これからもよろしくお願いします」

「やじさんも肩の荷が降りたってところかな お疲れさま。  でも、まさかそれだけのために戻った訳でもないでしょ」

やじさんは隠しても仕方がないので正直にこれまでの経緯をガンちゃんに伝えた。



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