初めてのクエスト?



 食堂に入ったやじさんと夕杏は注文しようと店の中を見わたしたが誰も居なかったので、とりあえずカウンター近くのテーブル席に座って待つことにした。

「中途半端な時間だからな~ おばちゃん買い物にでも行っているのかな?」

「あと1時間もしたら夕食時だから きっとそうかもですね」

「お~い おばちゃん いないのか~」

トントントンと二階の方から階段をおりてくる足音がした。この店の2階は簡易な宿になっているので掃除でもしていたのかもしれない。

「あ~ お客さんだったのね いらっしゃい。 待たせてごめんなさいね」

「あ 今来たばかりです 食事を頼みたいんだけど いいかな?」

「ここは食堂だよ もちろんよ  お嬢ちゃんは何度か見かけたことがあるけど あんたは初めてかい?」

どうやら若くなったせいなのか、夕杏と一緒に居たやじさんの事が分からないらしいが

「はい よろしくお願いします。」
と 経緯を説明するのが面倒と思ったのか躊躇なくやじさんは答えた。

「注文なんですけど、ベーコンと野菜のスープとパンを二つずつお願いします。 それと食後にサボテンシャーベットを2つでw」

「はいよ 最近お客が減っちゃってさ これからもよろしくねw」

「ねえ どうして本当の事 言わないの?」
おばちゃんが厨房のほうへ行くと夕杏が訪ねた

「ここの住人だと思われた方が納得してもらえるだろう  リアルから来て若くなりました なんて言っても怪しいと思われるだけさ」

「なるほど ちゃんと考えているのね 面倒くさいだけだと思っていたわ」

「これから先は、その設定で行くから よろしく~」

「そうね それがいいかもね」

しばらくして、食事をおえた二人は拠点へと戻って来ていた。

「お腹の調子はどう?」

「うん 平気だよ もう少し食べられそうな感じ」

「俺も まだ何か食べたいけど 我慢しとくか  そうだ たしか倉庫にワインしまってあった筈だけどな パネルちゃんオープンw   どれどれ あったあったぜ赤ワイン  夕杏も少し飲めよ」

「うん 少し貰うわ  そうだ 明日 食料も仕入れて 倉庫に入れとかないとね」

「今日 買っておけばよかったな すっかり忘れてた  はいよ ワイン」

「ありがと それじゃ 乾杯」

「じゃあ明日は 朝飯食ってから 買い出しして テレポートで一気に行くか」

「突然 イレブン砦のある街に入ったら警戒されそうじゃない? 手前の村にも確かポイントがあるから、そこから歩いて行きましょうよ」

「そか 念には念をてか  1時間も歩けば着くか ついでにモンスターでも狩って素材でも売れば、只の冒険者で通せそうだしな」

「居れば いいけどねw」

「まあ 居なかったら 倉庫に残っている素材を出せばいい」

「よしと それじゃ私は先に寝てみるかな」

「お~ 寝るのも初めてかw 起きられたら良いけどねw」

「食事も大丈夫そうだし、多分寝るのも大丈夫よ」

「んじゃ おやすみ~ってことで 俺も寝ようっと」

 この家は値段が高かっただけあって、十分な部屋数があり浴室とキッチンも2つある。それぞれ1部屋ずつ使っているが残りの部屋は使った事がない。
 そもそも必要な物は大体パネル管理のアイテム保存スペースに入っていて、常に持ち運んでいる状態だ。そうなると部屋に置いてあるのは家具類のみとなるが、その家具の中身もパネルとも直結していて家具にしまっておけば何処からでも取り出す事も出来るのだ。

 しいて言えば捨てる事の出来ないアイテム中心の物置部屋と化している、という事になるだろう。 通称:倉庫 便利な世界である。

 やじさんは自分の部屋のベッドに横たわり今日の出来事を時系列でまとめメモ機能を使い保存していった。
 『今日の出来事でバグがあったとしたら、俺がここに来た事くらいかな そういえばリアルに残された俺の一部はどうなったんだろう?  ‥‥この件に関しては忘れよう』

 等と考えているうちにやじさんは眠りについた、俺もそっちへ連れてってくれ~という夢のおまけも付いたが。

 翌朝目覚めた二人は顔を洗って寝ぼけた思考をはっきりとさせ、フィールドサーチで得たこの辺りのレベル平均値情報よりやや高めの設定の防具に着替え、目立たないように昨日の食堂へ行きサンドイッチとスープを頼み、おばちゃんから市場のお買い得情報を聞き、市場でパン・果物・健康茶・水・モンスター用焼肉のたれ等を2週間分仕入れて、パネルにある食料専用スペースへ収納した。パネルにある各保存スペースは、個人用を除きPTメンバーであれば出し入れ自由であるので、離れ離れになったとしても問題ない。

 そして準備が整いテレポートガイドゲート前へ着いた。

「一応 蘇生魔法かけて行くか? せーのでお互いに掛け合うでいいか?」

「うん でも効果あるのかなぁ」

「お守りだよ お守り  試す訳にもいかないしな まあ魔法があるんだからいけるんじゃね 信じる者は救われるのだ」

「わかった  じゃあ せーの」

 蘇生魔法とはいわゆるゲームでいう死に戻りである。経験値減と一定時間のステータス低下などのペナルティーはあるがセーブポイント的なものである。夕杏はゲームデーターであるならば納得できたが、今の状況では無理なのではと思ったのだ。

 互いに魔法をかけあった直後に、見覚えのあるキラキラした光はぼんやりと見えたが効果音は聞こえなかった。
 何かしらの効果はありそうだが今は分からないので、やっぱりお守りとしておこう。

「行くかね 夕杏君」

「はい」

二人は並んで行き先を唱え門の中央へと進んだ。

「ミハラ村」
「ミハラ村」

二人は徐々に姿を消し前に向かった。

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