初めてのクエスト? 2

 街のガイドゲートは冒険者の便利性をはかり殆どが中心部に設置されていたが、小さなミハラ村では2カ所ある村の門の一つ、南側の外に設置されていた。

 小さな村の多くは宿も商店もなく、冒険者が村の中まで立ち寄る事が少ない事もあったが、すぐに村を出て狩りに向かう冒険者に、いちいち挨拶のイベントが起きるのを回避する運営側の都合によるものだった。

「村の外でよかったな 誰にも会わなくて済みそうだ」
最初にゲートから現れたやじさんが、そうつぶやいていると続いて出てきた夕杏が気づく

「やじさん あれ」
夕杏が指さす方を見ると村の門から一人の子供、女の子がふらつきながら出て来るところだった。

やじさんは駆け出して少女の体を支えた。

「おい どうした ケガしてるじゃねーか   夕杏 回復魔法を」

「わかった」
夕杏が無詠唱で回復魔法をかけると、いくぶん元気を取り戻した少女が

「村に盗賊が… おじいちゃんたちが捕まって叩かれてる…」

「そうか もう大丈夫だ  俺がみんなを助けるから安心しろ  夕杏 悪いけどこの子をおんぶして付いて来てくれ」

「え ここに居た方がいいんじゃない?」

「誰が村人かわかんねえからな 分からない時にはその子の力を借りる  君なまえは?」

「キラ」

「そうかキラちゃんか じゃあキラちゃん そのお姉さんはゆあっていうんだけど お姉さんの背中につかまって村の人を教えてくれ  みんなを助けるためだ 頑張れるかい?」

「うん」

「よし じゃあ行こう 夕杏、キラちゃんを頼むぜ」

「わかった  キラちゃん あのおじさん やじさんって名前で 怪しそうだけど 優しくて強いから 大丈夫よ キラちゃんは私にしっかりつかまっていてね」

「はい」

 やじさんは門から中の様子を伺ったが、誰も居ないようなので村の中心部へと家の陰になるように静かに向かった。
 幸い、家と家の間の道から村の広場と思われる場所が見えたので、キラちゃんに尋ねた。

「あの 真ん中に座らされているのが村の人たちかい?」
夕杏の頭の後ろから恐る恐る村の広場をのぞいたキラちゃんが頷く

「うん みんないる  おじいちゃんもいる」

やじさんが見る限り村人は20人位で盗賊は5人である

「そうか じゃあ周りに立っている奴らが盗賊で間違いないね?」

「うん 剣もってる人たち」

「よし 夕杏 俺 左から回ってあいつらに声かけるから ここから援護してくれ 作戦コードネームは オオカミが来たでw」

「また 嘘をつくのね  まあ盗賊相手だからいいか」

「じゃ ちょっと行ってくる」

 やじさんたちはレベルもそうだが、防御も攻撃も動きの素早さも、全てのステータスが満開なのでモンスターならともかく、人である盗賊ならば何の障害もない。
 気を付けなければならないのは、とばっちりで村人たちにケガを負わせる事だ。

「おーい すんません 道を尋ねたいんですが」
 やじさんは素知らぬ顔を装い大声で声をかけ小走りで近づいて行った。突然の有無を言わせない状況をつくられると、人はわずかだが思考を切り替えるのに時間を取られる、つまり一瞬固まってしまうのだ。

息を切らせたように、やじさんは盗賊に向かって話しを続けた。

「すみません イレブン砦のある街って この村からどっちでしたっけ?」

と言い終わらぬうちに、やじさんは夏祭りのイベントで手に入れた狸の金棒と刻印の入った十手で一番近くにいた盗賊の首の後ろに一発決めた。

「あ いきなりすみません」

と言いつつ気を失った盗賊を丁度隣にいた盗賊の胸に抱かせて剣を持っている手首を思いっきり叩くと少し嫌な音がしたが、次の盗賊へと向かう。

「だから 道教えろって」

「なんだ てめー   ゲフッ」

向かってきた盗賊のミゾオチへしゃがみこみながら回転し、十手の房の付いてる方をめり込ませた。

『よし 次』と思ったやじさんだったが、すでに残りの二人は倒れている。こぶし大ほどの石が二つころがっているところを見ると夕杏が投げたものと思われる。『イタソ~』と思ったやじさんだった。

唯一意識のある手首を複雑骨折した男にやじさんは問いかける。
「これで 全員か?」

「あー そうだよ  テテテッ」

「おーい キラちゃん もういいぞ~」

 夕杏の背中からすでに降りていたキラちゃんは、おじいちゃんの所へかけてきた。そこで村人たちは助かった事に気づきようやく立ち上がった。

「おじいちゃん やじさんと夕杏さんが助けてくれたの」

「そうか キラが呼んでくれたのか ありがとな   やじさんと、ゆあさんで、よろしかったかな? 本当にありがとうございました。 もう少し遅ければ殺されていたかもしれません。 ありがとう」

「それで こいつらどうします? 一応縛りつけておきますが」

「砦の役人に引き渡したいところなんだが、この時間じゃあな  それに…」

「どうしたんですか?」

「いや 何でもない  往復したら夜になってしまうと思ってな」

「そうですか 丁度良かった こいつら今日かりていいですか? ちょっと聞きたい事があるもんで」

「かまわないけど 何を聞きたいんだね」

「そうですね なんで盗賊になったのか という所を詳しくね」

「ふ そういうところかい  今日と言わず何処かへ連れて行ってくれとお願いしたいところだねw」

「それと すみませんが 今日こちらに泊めて頂けますか? もちろん番犬も兼ねてですけど」

「あ~ うちへ泊るといい 物置小屋もあるからそいつらを閉じ込めておくことも出来る」

「助かります じゃあキラちゃん 今晩泊めてもらうね よろしく」

「あんまり いい食事ないけど‥‥」

「大丈夫 夕杏ねえさんは美味しい食事いっぱーい持ってるから一緒に頂こうぜ」

「え いいの ありがとう」

「すまないね かえって気を使わせてしまって」

「いいんですよ 宿代だと思ってくれると気が楽です」
やじさんたちは盗賊を簀巻き状態に縛り上げ、物置小屋へきれいに並べた。ちなみに並べてから治癒魔法を元気にならない程度にかけ、お話が出来る状態にはしておいた。

 その後、夕食まで少し時間があったので近所で捕れるという豚型モンスター【ブタードン】を5匹ほど捕獲して村人へ提供したら、お礼にと2年物だという赤ワインを頂き、やじさんの機嫌はすこぶる良かった。

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