初めてのクエスト? 3

 村に住んでいる者の夕食と寝る時間は早いが、今日は特別のようだ。
 やじさんたちの差し入れたブタードンはモンスターというだけあって通常の豚の3倍程度の大きさがあり肉を処理するのも大変だが、その皮や骨なども素材となるので雑に扱えないためである。

 その上、冷蔵庫がなかったので塩漬けにしたり燻製にしたりと村中総出で作業を行ったからだ。
 やじさんは、その間に盗賊たちとお話しする時間を作っていた。

「まずは、君たちは村の人達に暴力によって恐怖を与え、村の貴重な財産である食料を無料で頂こうとした。 これに間違いはないかね?」

「その点についてはあんたも見ただろう 認めるよ」

 盗賊のリーダーらしき男が素直に話し始めると他の男たちも合わせるように頷いた。簀巻きにされ横になっているので実際は頭を少し上げているのだが…。

「今 その点って言ったよね 何か他に言いたい事があるみたいだけど?」

「俺たちは盗賊だが、村の人達を殺そうと迄は思っていなかった。ただ食料を集めるのが目的だったのさ」

「なるほどね、そこいらの盗賊とは違って人を殺したりしないっていうポリシーを持ってるから野蛮じゃないってか  幼い女の子にケガを負わせているんだぜ、あまり変わらないと思うけど?」

「あの子には手を出していないし、逃げても追わなかった。きっと慌てて転んだのだろう ケガをしたのは申し訳ないと思っている」

「ふーん 悪いという気持ちがあるんだ? なんだか盗賊らしくないね。  それじゃ質問を変えるね 奪った食料はどこへ運んでるの? まあ自分たちのアジトだろうけど、それは何処?」

「すぐに売ってしまうのでアジトは必要ない 毎日場所変えて野宿しているよ」

「へ~ 盗賊から食料をすぐに買ってくれるなんて、随分すてきな知り合いがいるんだね。 ちょっと待てよ。 買うっていうんだから街の商人かな? たしかイレブン砦の街にもいくつか店があったな。 そのうち食料を扱っているのは何件かしかない筈だ。当ればすぐに共犯者がわかるなw でもさぁ面倒だから誰が買っているのか教えてくんないかな?」

「知って どうする?」

「なんにもしないよ あんたが本当の事を言っているのか確かめてるのさ。  ところであんたの名前は?」

「俺たちを どうする?」

「そうだな 場合によっては開放するよ。 ただし、もうこんな事しませんって、村の人達に本当の事を言って土下座するのが条件だけど」

「‥‥‥ 俺の名はジョーンだ。 こいつらは俺の部下で、俺の命令で仕方なくやっている。 あんた誰かに頼まれたのか?」

「俺はやじ、ただのアルパ帝国の冒険者さ。 ちょっと変な噂を聞いてね、 解決出来たらイルバ王国から報酬が出るらしい」

「何 国王が!   そうか‥‥ 」

 勝手にイルバ国王の計画と思ったのは、やじさんの所為ではないが、やじさんはこの機を逃さなかった

「で どうする このまま悪役で終わるか、悔い改めて国のために働くのか どっちにする?」

「わかった 我々も好きこのんで動いていた訳ではない 正直にすべてを話そう」

 やじさんはジョーンから全てを聞いてギルドのガンちゃんが仕入れた情報に間違いがない事を確認した。

「よし わかった これから村の人達とブタドーンを肴に一杯やるから、上手く説明しとくわ  だから開放は明日な   ゆっくり謝罪の言葉でも考えていてくれ  それじゃ」

 やじさんが物置小屋を出て母屋に向かう時に、広場の方から村人たちが大きな皿を持ってやってくるのが見えた。

『そういえばキラちゃんのおじいさんの名前聞いてなかったな まあ、なにか感づいていたみたいだったし何とかなるか』
 そう考えながら村の人達と一緒に家の中へ入っていった。

 おじいさんの家はたまに集会なども開かれるので12畳位の部屋と、それより少し大きい中庭があって今夜はやじさん達へのお礼も兼ねてみんなが集まる事になっていた。

 夕杏もやじさんが盗賊たちの事情聴取を行っている間にその手伝いをしていて、庭に並べられたテーブルに持ってきた食料からサラダやサンドイッチ、果物、清涼飲料水等を出して並べていた。

 これにメインの出来立てであるブタドーンのやわらか煮込、スパイシーな焼き物、特別ブレンドのチップを使った燻製が加えられておじいさんの一言あいさつから食事会がスタートした。

「えーみなさん 今日は大変な一日でしたが、やじさんたちのおかげで無事に楽しい夜を迎えられる事になりました。 感謝の意を込めて全員で乾杯したいと思います。 それではやじさん、夕杏さん ありがとう 乾杯~」

「かんぱーい ありがとう」

「いえいえ 食事の用意までしてもらって、かえって申し訳ないです  それとみなさんにお話ししたい事があるんですが 腹も減ってるんで先に食べちゃいましょう では いただきまーすw」

 ブタドーンのジューシーな噛み心地にワインを加えるとやじさんの口の中は久しぶりのお祭り騒ぎの様になり、次々と料理を手にとっては口へと運んで行った。

 夕杏も周りの楽しそうな雰囲気が手伝ったのか、村の女性陣に囲まれておしゃべりを交えながら料理を口にしていた。キラちゃんは清涼飲料水を手にもって、夕杏にぴったりと寄り添うポジションをキープしおばさん達に負けないようにおしゃべりに参加している。

 お話しはもう少し後でいいかと思うやじさんであった。


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