初めてのクエスト? 4

「そういえばやじさん なんか話したいことがあるって言ってたんじゃぁ?」
キラちゃんのおじいさんに言われてやじさんは、少し酔ってきていたが話し始めた。

「えーと みなさんにお願いしたい事があって、お話しを聞いて欲しいんですが、お時間いただいていいですか?」

「おー いいぞ 何でもお願いしてくれ」
 と、これまた酔い始めた住民からお許しの許可が出た。

「実は私がここへ来たのは偶然ではなくて、ある噂を耳にしたからです。 それはこの国の王様が備蓄していた食料をある部下に隠され、国民に配る事が出来ずにいる事。そして犯人の目星はついているが断定できず、その証拠を探しているという事でした。」 「その噂なら聞いた事がある」

「私も」
 住民の何人かがうなずく様に答えるとキラちゃんのおじいさんが慎重に言葉を選びながら言った。

「やじさん それは未だ噂でしかない。が、多くの者が聞いている上、情報源はお城の内部からと言う噂もある。 だが、私は今日の盗賊の様子を見て本当ではないかと感じた。必要な事以外しゃべらずに統率がとれていて、身分を知られたくない印象を受けた。そう、盗賊らしくない。 多分、砦の兵隊じゃないかと思うんだが...」

 やじさんは、まるで打ち合わせをしたような、おじいさんの言葉に心の中で『グッジョブ』とつぶやき話を続ける。

「そうなんだ 実はこの食事会の前に盗賊たちと話をしてね、かいつまんで言うとおじいさんの言う通り兵隊だそうだ」

「え 盗賊が兵隊だったのか」

「最初に食料を国民に配る前に、命令で食料を運びだす手伝いをしたそうなんだが、これが王様の知らない事でね、しゃべったらお前たちも仲間だと王様に言うと脅されたそうだ。そのうえ何か変な行動があったら家族に危害を加えるとも言われて、その後も村を襲っては食料を集めろと言われていたらしい」

「なんで国から沢山の食料を奪ったのに、俺たちからも奪うんだ?」

「それは、盗んだ食料をある商人を通して国にべらぼうな値段で売っているという事らしいが、もし別口で安い食料が出てきたとしたら、今までのように高い値段で売れなくなってしまうと考えたそうだ」

「俺たちの村には、そんな国に差し出すような沢山の食糧なんてないぞ?」

「うん、一つの村からだとするとそうだろうけど、国中の村から集めたらばかにならない量になるからな」

「なるほど」

「それにもう一つ。 王様に感づかれている事を知ったその悪党は、できるだけ早い内に高い値段で売り切って、国から逃げ出そうとしているらしい」

「それじゃ 早く捕まえないと逃げられちまう」

「そこでだ、なんにしても証拠がなくちゃ王様も手を出せないらしいからな、実は今日捕まえた奴らを、俺の熱い情熱と愛で改心させたところ、犯人を捕まえるのを手伝ってくれると約束してくれたんだ、あいつら生き証人だからね。 もちろん、あいつらの家族の安全が条件だがね」

「でも 信用していいのか?」

「うーん 俺が話した分には大丈夫だと思う。 で、お願いってやつなんだが明日あいつらの話を聞いてくれないか? 聞いたうえで判断してくれていい。」

「やじさんが大丈夫っていうなら話だけでも聞いてみるか」

「うん 騙されて脅されているっていうなら、可哀そうだし… 話だけならいいんじゃない?」

「ありがとう みんな。 あいつらには明日土下座して謝罪させるから、ちゃんと話を聞いてやってくれ」

やじさんが頭を下げると、それまで真剣な表情で話していた住民たちに笑顔が戻った。

「じゃあ、その話は明日にするという事で、今夜はもう少し飲みましょうよ。 もしもやじさん達が来てくれなかったら少ない食料を奪われていたかもしれないしね、今日は、そのお礼なんだからね、もっと飲んでよね はいどーぞ」

 リアルで言うとやじさんより5つ位下の年齢と思われる少しぽっちゃりした素敵な熟女さんから言われると、やじさんはおやじ臭い、にやけた顔でワインを飲むのであった。

 という事で、おじいさんの観察力に救われたやじさんは、夕杏と共に村の住民達とのお食事会と称する飲み会に、もうしばらく付き合う事になった。

 翌朝、やじさんが目を覚ますと、隣には夕杏がこちら側に顔を向けて寝ている姿が目に入った。
『そうか 昨夜は確か飲み過ぎてしまって、おじいさんと夕杏にベッドまで運ばれて来たんだっけ』

 ゲーム中では何度か野営をした事もあり、くっついて焚火の傍にいる事もあったが眠るという事はなかった。始めて見る夕杏の寝顔が可愛かったのであろう、やじさんはじっ~と寝顔を見つめていたが

『やばい トイレ行かなきゃ』  起こさぬように、そーっとベッドから抜け出しトイレへ向かうやじさんだった。

『飯食ったら、あいつらのとこ行って、昨日の事を話しておかなくちゃな』
 トイレから出て部屋へ戻ると、残念なことに夕杏は眼を覚ましてあくびをしていたところだった。

「あ 夕杏 おはよう どうだった初めての睡眠は?」

「おはよう やじさん  うん なんだか体がだるい感じ」

「そか 急に起きると貧血で倒れる事もあるから、ゆっくりした方がいいぞ」

「うん わかった」

「そういえば、トイレにいったか?」

「うん 昨日1回行った」

「上手にできたかね なんな… えっ」

 ヴォーッという音と共にものすごい勢いで枕が、にやけたやじさんの顔に向かって飛んできた。

「おはよう やじさん、夕杏さん」
 元気な声で朝食を知らせに来たキラちゃんに答えたのは夕杏だけだった。

「おはよう キラちゃん」

「やじさんどうしたの?」

「やじさん 枕の匂いがとっても好きなんだって」

「へぇー 変なの 朝ごはんできたから 食べなさいって 」

「わかったわ ありがとうね キラちゃん すぐに行くわ」

「ひでーな なにも枕投げる事ないだろ」

「若くて、かわいい女の子に変な事、言おうとしていたでしょ」

「さて、朝ご飯でも食べに行くかな?」

「ほら 誤魔化した」

 女性は可愛くても、怖いものであるとやじさんは再認識するのであった。

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