初めてのクエスト? 6

 見せかけの荷物とやじさんと夕杏を積んだ馬車はジョーンが手綱を握り、隣におじいさんが乗り、前後2頭の馬にジョーンの部下が乗り街へと向かっていた。

「ねえ やじさん クエストだったとしたら報酬何かな?」

「うーん クエスト名があれば大体予想がつくんだが、ご褒美の粗品って感じかな」

「欲しい物があれば申してみよ、なんて言われたらどうしよう」

「なんか欲しい物あるの?」

「空中に浮かんで、思い通りに動けるアイテムがあるらしいのよ」

「え~ 魔法で飛べるじゃん」

「それだと 空中にいる時に他の魔法が使えないでしょ」

「なるほど で、それがイルバ王国にあるの?」

「わからないの だから、もし報酬を聞かれたら聞いてみてよ ネッ 」

「わかったよ でも、もし聞かれたらだぞ」

「ハーイ」
キラちゃんのような、かわいい返事をする夕杏だった。

「おーい やじさん わしはここで降りて歩いて向かう 成功してくれよ」
速度を落とした馬車から降りたおじいさんが声をかけた。

「わかった おじいさんも気を付けて 安全第一でw」

「あぁ そのつもりじゃ」
やじさんと夕杏はロープで縛られているが、ロープに切れ目を入れているので、いつでも自由に動ける。
だが、商人の所に行くまでは、おとなしく捕まっているふりをしていなければならない。

「ねえ ジョーンさん 直接馬車でいけるの?」

「あぁ 倉庫まで馬車で入れる。 それと、もうすぐ街の門に着く、警備兵は俺の管轄外だから、何か聞かれても面倒だから気絶でもしておいてくれ」

「了解  倉庫まで昼寝でもしておくよ」

「本当に寝ないでくれよ」

「了解」
5分程で門に着いた馬車は、警備兵の居る詰め所前で停止して門番に声をかけた。

「おーい 守備隊のジョーンだ 巡回から戻った。 街に入っていいか?」

「あ ご苦労様です。 その荷物は何ですか?」

「あぁ 巡回のついでに食料を少し分けてもらってきた。それと怪しいやつらが居たので捕まえてきた。もしかしたら今噂になってる盗賊の一味かもと思ってな」

「盗賊ですか? 男と女の2名ですね? 冒険者みたいな恰好をしていますが、何をしたんですか?」

「村の倉庫の中にいたのを見つけてね、俺たちを見たら急に逃げ出そうとしてな、事情を聴こうと捕まえようとしたんだが、抵抗したもんで、つい殴ってしまった」

「それで、仲良くおねんねしているんですね、分かりました。 それでは守備隊の方にお任せしますね」

「あぁ 捕まえてしまった以上、最後まで面倒見るよ。 それじゃ街に入るぞ」

「はい ご苦労様です」
やじさん達は無事に街に入る事が出来、そのまま砦の方へ続く通りをゆっくりと進んだ。

砦のある街なのでそれなりに人口は多いはずだが、人通りはあまり多くない。食糧不足の影響なのか余り活気が見られない暗い印象を受けるが、やじさん達にとっては都合が良かったのかもしれない。

「やじさん 倉庫に入るぞ‥‥」

「準備はできてる いつでもOKだ」

「おーい ジョーンだ、扉を開けてくれ 食料を持ってきた」
ジョーンが叫ぶと金属で補強された分厚く大きな扉が開き、中へと誘う。

静かに前に進み馬車を転回させ、入り口に方へ馬の鼻先が向くころにはすでに扉は閉まる寸前だった。

中は、高い天井に付けられた天窓から十分な光を取り入れているため、忘れん棒の起動には問題ないようだ。

やじさんは右腕を自由に動かせる程度に縄を緩め、忘れん棒を自分目線になるようにセッティングして待った。

後は、自動で声の主を探して勝手に記録してくれる。

倉庫の奥側の扉から商人らしき人物と護衛と思われる2人の男が現れた。

「やあ ジョーンさん 今日は来る日じゃなかったと思ったが?」

「突然すまんな 通常の任務で立ち寄った村に不審な奴が居てな、どうも盗賊を探している様だったので不味いと思って捕まえたら、村人が盗賊を捕まえてくれたと勘違いして食料を安く分けてくれたんだ。それをちょっと換金してもらおうかと思ってな」

「あ~小遣い稼ぎですか? でもゴーンさんに知れたらまずいのでは?」

「それは、お前が黙っていれば済む事だと思うがね。 違うかい?」

「通常任務中だとすると、ゴーンさんは知らない物件という事でよろしいので?」

「それで問題ない」

「では、盗賊として手に入れたレートより少し安くなりますが…それでよければ引き取りましょう」

「さっき言ったろう、安く仕入れたって。元がかかってるんだから同じで頼むよ」

「わかりましたよ 滅多にないジョーンさんの頼みだ、じゃあ、いつものレートでいいですよ」

「サンキュー  こんなもんで良いかな、やじさん?」

「あ~十分だ 夕杏 後ろの2人を…」
すでに睡眠魔法を発動し終えた夕杏は束縛用のロープを持って馬車から降りるところだった。

「うーん 立ち回りシーンも欲しかったんだけどな」

「あら、ごめんなさい 起こそうか?」

「いや もう記録されてるし、やり直したら嘘くさい」

「じゃあ、縛って動けなくしておくね」

「ジョーンさん、ここには、あと何人くらいいる?」

「家族は家の方に居るだろうし、今日は荷物の入る日じゃないから人夫も居ないだろうが、一応見て回るか。 おい2人で見てきてくれ」

「了解 ボス」
部下の2人が念のため店の中を確かめに行った。

「それじゃ私はおじいさんに、これから王様の所へ行くと伝えて来るね」

ぎっちりと商人たちを縛り終えた夕杏がおじいさんに伝えに行った。

「お~ 頼む」

「よしと、 みんなが戻ったら城に向かおう」

「あとは王へ事実を伝えるだけだが、ちょっと気が滅入るな」

「ジョーンさん無期懲役かもね」

「おいおい 俺の身にもなれって」

思っていたより簡単に済んでしまったが、本番はこれからである。やじさん達は次の目的地へと馬を走らせた。


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