初めてのクエスト? 7

 本来は移動魔法かゲートを使った方が早いのだが、冒険者でない者が多かったため馬での移動となった。

 城と砦の往復は10Km程度なので馬に乗っている時間は30分位になるだろう。
 馬に乗りなれていないやじさんでも、尻の痛みに耐えられる時間である。

 ジョーンさんの乗った馬を先頭に、整備された街道を進むと10分程で城が見えてきた。
 ジョーンさんの右手が上に少し上がると、馬達は少しずつ速度を落とし城下町へと続く門の前で止まった。

 まだ夕刻には早く、門が閉まっている訳ではないが警備の兵がジョーンの所へ近づいて来た。

「なんだ ジョーンかこんな大勢でどうした?」

「ちょっと耳を貸せ・・・・・・・」

「わかった 俺が手配しよう。 そうだな20分後に応接室に来い」

「助かる それじゃ後で。 やじさん街に入るぞ、よそ見しないで付いて来てくれ」

「尻が痛い。歩いて良いか?」

「情けないな、降りて手綱を引いて来ると良い」

「夕杏は大丈夫なのか?」

「少し、腰を浮かせるように乗ればいいのに、どっかり座っているからそうなるのよ」

「鞍って座るものじゃないのね‥‥」

よく周りの乗り方を見ればすぐに分かる事なのに、残念な人である。

「ジョーンさん、さっきの人は大丈夫なの?」

「あぁ 大丈夫じゃなかった俺が保証する」

「なるほど」

「さあ、ここが城の厩舎だ、馬を預けて城へ入るぞ」

城は頑丈な作りだが、シンプル&質素で税を無駄に使っていない事が伝わってくる。

応接室前には強そうな警備兵が2名立っていたが、こちらの素性を知らされていたのかジッと睨まれたくらいで済んだ。

ジョーンがドアをノックすると中から入れと声がしたのでやじさん達は中へと入った。

「やあ隣国の冒険者殿、私はイルバ王国を任されているアルベールだ、君たちの名は?」

「初めましてアルベール国王様、私はアルパ帝国で冒険者をしている、やじと言います。」

「同じく夕杏です」

やじさんは人懐こそうに、ニヤリと作り笑顔で挨拶をしたが、夕杏は膝を少し折り曲げ軽い会釈をした。

たったこれだけで人の本質が分かる、一例である。

「ジョーン、ゴン・エーモンの悪だくみの証拠をつかんだというのは本当か?」

「はい、冒険者であるやじさんと夕杏さんの力を借り、商人を使って食料を売りさばいていた証拠と、その悪だくみに加担した者を捕まえました。 やじさん頼む」

やじさんは、忘れん棒を起動し3D360度の映像にBGMを加えて部屋いっぱいに再生した。

「なるほど、この者に食料を渡し、元の持ち主に高い値段で売りつけていたという事か‥‥、それで加担した奴は何処だ?」

「私です‥‥しかし部下たちは私の命令で仕方なく、全て私の責任です」

やじさんはここぞとばかり口を挟んだ。

「最初は何も知らず騙されてしまったんだ。その後は家族を人質にされ、どうしようもなかった。だが、こうやって証拠を集め、自ら罪を認めたうえで、ゴン・エーモンの不正を暴く事を選んだ。国王様も少し手伝ってくれるとありがたいんだが」

「うむ、まずはゴン・エーモンを取り押さえ、食料を取り戻すことが先決だ。騎士団を一緒に連れて行くがいい、腹を減らしているので狂暴になってはいるが、砦の兵士は大人しくなるだろう。

 これは国王命である、すぐにゴン・エーモンを捕らえ、全てを取り戻せ」

 ジョーン達は無言で姿勢を正し、揃って敬礼をした。

「やじさんといったな、部下が迷惑をかけてすまない、それと頼みが一つあるのだが」

「できる事なら、何でも言って下さい」

「その便利な道具で、捕まえるところを記録して、後で見せてはくれぬか?」

「了解w」

 やじは、懲りずにニヤリと作り笑顔でジョーン達の真似をして敬礼したが、姿勢があまり良くなかったため、決めポーズには至らなかった。

「ねえ、やじさん。 騎士団が一緒なら私たちの出番ないよね?」

「そうだな、この人数だと誰も歯向かわないだろうし、ジョーンさん達に任せようぜ」

「ご褒美‥‥でるかな?」

「そっちかい」

 砦についた一行が最初に行ったのは、砦の守備隊の制圧である。制圧と言っても現在の持ち場から動くな、の一言で終わった。

 やじさんはカメラマンの如くジョーンの後ろへ陣取り、馬に乗って並ぶ騎士団の中央を、砦の奥に向かって進む。

 その先には、何事が起きたのかと出てきたゴン・エーモンの顔が、ジョーンを見た瞬間、青ざめて行くのがはっきりと分かった。

「ジョーン、裏切ったのか‥‥」

「脅されていても、裏切った事になるのかな? 全てを国王に話した上でお前を捕らえに来た。 観念するのだな」

「あぁ 欲を出し過ぎたようだ。 大人しく捕まるよ」

「騎士団長、すまんが縄を打って城へ護送してくれ、俺たちは商人を連れて行く」

「わかった、危険はないと思うが注意してくれ」

「ありがとう」

「おい、第一騎士団隊長。 こいつの替わりに暫くここで指揮をとれ」

「わかりました」

 やじさんは一旦、忘れん棒を止めジョーン達と商人の所へ向かった。

 おじいさんが街の有志と一緒に見張りを続けているので、早く知らせてあげなければと足を速めた。

 明日には、隠されている食料と共に、支払った大金が戻ってくる。これで食料不足を補っていけるはずだ。

 多くの国民が救われたのである。


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