初めてのクエスト? 8

 ゴン・エーモンと商人達をお城に護送し終えたやじさん達は、応接室へ来るように言われ歩いていた。

 本来であれば謁見の間で労いの言葉を承るところであろうが、今回はジョーンという身内が絡んでいるため配慮されたのであろう。

 さっきまで威勢の良かったジョーン達は、これからの事を考えて不安なのであろう、背中が丸くなりうつむき加減で力なく歩いている。

 応接室前に来ると気持ちを切り替えたのか、兵士らしくシャキッと背筋を伸ばすとドアをノックした。

「やじさんと夕杏さんをお連れしました。 入ります」
『あっ 俺に振りやがった』とやじさんは思ったが、まあいいかとジョーンの後に続いて部屋に入った。

「やじ殿、夕杏殿、今回の件、世話になった。目星をつけ調査中だったのだが、なかなか証拠が揃わなくて、難儀していた所だ。本当に感謝する、ありがとう」

「いえいえ、王様、頭を上げてください。冒険者として、困っていた村の人の手助けをしただけですから」

「その村人を困らせていた張本人が、ジョーンであった事が恥ずかしい限りだ。守るべき立場の兵士が民を苦しめるなど、あってはならぬ事をしでかした。ジョーンには相応の償いを科す事になるだろう」

「王様、その件なんですが、ジョーン達の助けが無かったら、この事件はまだ解決していなかったでしょう。できれば潜入捜査をしていたと受け止めてもらえませんか?」

「うむ‥‥、今回の働きに関しては十分加味するつもりであるが、犯してしまった罪は何らかの形で償わなければ民も本人も納得しないのではないかと思うが?」

「そうですね、王様、提案なんですが、ジョーン達の休日には、被害にあった村で、無償で働いてもらうって、いうのはどうですか? 例えば3年位とか?」

「なるほど、直接穴埋めをさせる訳だな… いい考えだと思うが私からも提案がある、この度の件は国にも責任がある。 それで、ジョーン達の城務めの日数を半数に減らし、その分村で働いてもらうというのは、どうだ?」

「いいと思います。その方が皆から許してもらえるのが早い」

「では、ジョーン。聞いていた通りだ、明日から罪を償え」

「はい、分かりました。寛大な処分に感謝いたします」

 ジョーン達の目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えたが、処分が軽かった嬉しさではなく、犯した罪への後悔からであろう。

「それとだジョーン、城務めが半数になるので、給金も半分になるぞ」

「えっ」

「冗談だ、冗談。少しは罪の重さってやつを味わえたかな? 国にも責任があるとさっき申したろう」

「一瞬、妻の顔が浮かびました。精一杯働かせて頂きます」

「ところでやじ殿、今回の働きに対して、礼をしなければと思うのだが、変わったアイテムを持っているところを見ると、その辺の武器や防具ではつまらんだろう、何か欲しいものはないか?」

 夕杏はすかさず、王様から見えないように、やじさんの尻を蹴り、PTモードで『ホラ、早く、はっきりと言いなさい』とつぶやいた。

「実は、空を飛べるアイテムを探してまして、もし情報があれば教えて頂きたいなぁなんて思っているんですけど」

「空を飛べるアイテムか… 聞いた事があるな」

「ホントですか?」
夕杏の方が早く反応した。

「ああ、本当だ。やじさんが前に出て尋ねるという事は、かなりの一品であろう、嘘はつかない」

『バレてる』夕杏は顔を少し赤らめながら尋ねた。

「この国にあるのですか?」

「私がまだ王子だった頃だが、国の歴史を学んでいる時に大臣の一人から空に浮ぶ事が出来るベルトがあると聞いた事がある。ただ、一応国の宝として管理されているからな、今回の働きだけでは、ちと足りぬかもしれぬな」

「そうですよねぇ 質の悪い大物盗賊をちょっと捕まえたって感じですものね」

「いやいや、手柄としては評価は高いと思うが、国の宝となると、あとちょっと足りんという事だ」

 夕杏が今回はクエストじゃなかったのか、と諦めようと思った時に王様から提案があった。

「そこでだ、やじ殿、もう一つ国の為に働かんか?」

『来たー これまでがクエストのフラグだったのね』再びやじさんは夕杏に蹴られた。
「もう一つと言うと、それをこなせた時には、その宝を頂けるという事ですか?」

「うん、大臣達には私から説明しよう。最悪でも私の友人に貸与するという形をとる事で渡すことが出来る。これは約束しよう」

「だってよ、夕杏。 どうする?」

「わたしは、やじさんの思うとおりでいいよ」

「それじゃあ仕事の内容を聞いてから、改めて返事しますので、教えて頂けますか?」

「その前に、今日は友人になるために夕食を一緒に、どうだ?」

「かしこまったやつは苦手なんですが」

「自分とやじさん、夕杏さんの3人だけだ、まだ妃のあてがないものでな、気楽に話そう」

「それなら大丈夫そうです」

「酒も少しなら付き合えるぞ、友人の盃も傾けなければならぬしな」

 夕食まで時間があるので、やじさん達は客室へ案内された。今日はお城へ泊ってもいいそうなので、遠慮なく使わせてもらう事にした。

「ねえ、やじさん。仕事って何かなあ?」

「あの感じだと、大臣達を納得させるためっていう、やつだろうからなぁ、冒険者の本領発揮っていう感じかな」

「そうだね、クエストで雑魚モンスターじゃつまんないもんね」

「俺たち結構強いけど、この世界も変わっているし安心できないからな」

「分かってるって、やじさんが先に突っ込めば大体何とかなるし」

「とにかく話を聞いてからだな」

「うん」

やじさんと夕杏はこれから受ける仕事に、期待し想像を膨らませるのであった。


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