初めてのクエスト? 9

「すまん 少しばかり待たせてしまった」

 約束の時間をほんの少し過ぎたところで、王様が少し慌ててやってきた。
 大きめのテーブルの上には、すでに夕食の準備がされ美味しそうな香りがお腹に刺激を与えていた。

「いや、時間丁度ですよ」

「うん、私たちも来たばかりですよ」
 まるでデートでのお約束の言葉だ。

「では、さっそく始めようか? まずは乾杯だ ワインで良いか?」

「はい」
 3人はそれぞれグラスにワインを注ぎ、立ち上がって言葉を待っていた。

「やっぱり 私か」
 王様が言うと、やじさんと夕杏はうなずいた。

「今回は事件がきっかけとはいえ、私達は良い友人と出会えることになった。 私は神に感謝し、今日はその絆を深め、これからも友人として変わらぬことを誓おうと思う、それで良いかな?」

「はい」「はい」

「それでは永遠の友情に、乾杯」「乾杯」「乾杯」

 3人は乾杯用の小さめのグラスを一気に飲み干すと、少し大きめのグラスにワインを注ぎなおして、無言のまま席に座った。友人としては少しぎこちないスタートとなった。

「さあ、食べてくれたまえ、城の料理長は色々な料理に精通していて、食料が少ない時でも工夫して旨い料理を出してくれるんだ。私が保証する」

 王様が言う通り、食材を見るとウサギなどの小動物や森で捕れる木の実等が中心となっているようで、豪華とは言えないが、色鮮やかなソースをふんだんに使っていて、香ばしい肉の匂いが引き立っているのが分かる。

「美味しそうですね、さっきからお腹がグーグーなってました。 いただきます」

「俺も、いただきまーす」

 3人はお腹が少し落ち着くまで料理を堪能した。
「ほんとに 美味しいですね。街のレストランとはやっぱり違うわ」

「ばか、そんなとこと比べるなよ」

「二人とも仲がいいのう 失礼だがどんな関係なんだ?」

 やじさんは少し悩んだが、嘘にならないように、自分がこの世界の人間でない事だけを伏せて話すことにした。

「夕杏とは5年ほど前にアルバ帝国の冒険者ギルドで知り合って、それから二人でPT組んでるんです。ずっと二人だったせいか良い所も、悪い所も知ってるって感じですかね」

「なによ、その悪いとこって」

「話し言葉として必要な単語だろーが」

「ふーん、聞いといてあげるわ」

「なるほど よくわかった で話は変わるが、私の事はこれから『アル』と呼んでくれないか? もちろん公式の場では今まで通りでと、お願いするが」

「アルですね、慣れるまで時間かかりそうだけど」

「じゃあ私はアルさんって呼びますね」

「あぁ そうしてくれると助かる。 王様と呼ばれると、つい、それなりの対応をしてしまうのでな」

「そうだ アル。次の仕事って何だい? 気になって仕方がないんだけどさ」

「うん、これから話そうと思っていたのだが… 君たちはどれくらいの強さなのだ? ジョーンは一瞬でやられたと言っていたが?」

「ギルドの基準でいったら最高ランクかな? 与えられたミッションやクエストは全部こなしたから、レベルなら2年前で丁度100だったから、今も同じくらいだと思いますよ。 あ、夕杏もほとんど同じです」

「私は、後衛っぽい動きが中心なので、魔法スキルはやじさんより高いですよ、やじさんは脳筋ってやつだからw」

「なに! それでは城の騎士団長では、敵わないかもしれないな、もしあいつが聞いたら、直ぐに手合わせをさせろと、うるさそうだ」

「いやいや、人間相手は分からないですよ、モンスター相手の戦闘経験なんて役に立ちませんからね」

「そんなもんなのか? まあ強い事には変わりはないだろう」

「まあ、そういう事で」

「では、仕事の話だが、君たちが興味を持っている、空中に浮かぶと言われるアイテムに関連しているのだが」

「うんうん」

「君たちから話を聞いて、さっそく宝物庫へ調べさせに行かせたのだが、暫くの間使っていなかったせいか、魔物が住んでしまったようで、調査兵が逃げ帰ってきたそうだ」

「あの、使っていないって、どのくらい?」

「そうだな、宝なんぞほとんど出すこともなかったからなぁ? 私が王になってから一度も行っていないし、親父に聞いても知らん、と言っていたから10年以上は誰も行ってないな」

「でも、どこから宝物庫に魔物が入ったんでしょうかね?」

「うん、大臣達に聞いたら、魔物が生まれるには澱んだ魔力が必要なのだそうだ、つまり地下にある宝物庫の付近に、その澱んだ魔力が貯まる場所があって、長い間使わずに、閉め切った状態だったのが原因ではないかというのだが」

「つまり、侵入した訳じゃなく、放置してたので乗っ取られたという事ですか?」

「恥ずかしいが、そういう事だと思う」

「地下って言っていましたけど、深いんですか?」

「実は、私は一度も入ったことが無いのだ、これも大臣の話だが、最初地下へ続く階段があって、そこへ宝物庫への扉があるそうだ。そこから入ると一つ目の部屋があり、奥の方には更に下へ降りる階段があるらしい。そういう部屋が全部で5つあると言っていた」

「んと、つまり地下5階建ての宝物庫ってやつですね?」

「そういう事になるな」

「で、調査兵はどこで魔物を見つけたんですか?」

「扉を開けて、すぐに閉めたそうだ」

「げっ、それってほぼダンジョンじゃないですか」

「そうなるかもな」

「あれ、仕事って宝物庫に調査行く前に、あるって言ってましたよね?」

「気がついたかね、さすがやじさん」

「もしかしてだけど、お仕事って一つ増えた?」

「まあ、これはやじさん達の欲しがっている宝に関わる事だから、仕事とは言えないとは思うのだが、頼むという事からは、仕事とも言えるな」

「はぁ 特に急ぐ用事もないからいいですけどね、まあ友人の頼みじゃ仕方ないかw」

「うん、別にかまわないよ」

「それとじゃ、ついでに私もついて行って良いか?」

「え~ アルさん 戦えるの?」

 一緒について行くというアル国王、やじさんと夕杏は少しばかり、驚いたのである。


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